恍惚境裡にただ独り

浪漫を糧に生きています

2017-04-16から1日間の記事一覧

兵士の休息

戦うために生まれた兵士が、祖国から離れた土地で、かつて彼の戦場であった空を見上げながら、ひっそりと死んでいこうとしていた。どうやら戦争は随分昔に終わったらしい。もう自分のことなど誰も覚えていまい…。 ある日、懐かしい日本語が聞こえる。おやこ…

緩やかに死にゆく飛行機

自然から授かった命に限りがあることは誰でも知っているが、科学から授かった命も技術者に見捨てられた時点で終わるという意味で有限であるとしたら、ますますその境目は曖昧である。 私は、部品の枯渇で緩やかに死んでいく航空機を知っている。 もう彼の仲…

夜明けの位置

今はGPSやレーダーがあるから座標として自分の位置を知ることができる。 それでも、水平線しか見えないというのは不安でしかなく、特に夜は艦橋から見える僚艦のささやかな灯だけが心細さを少しだけ紛らわせる。 夜は、空と海は完全に溶け合い、星座の中を航…